感染症の種類から日常生活の注意点まで。“免疫”のことを『分かりやすく』発信していきます。

vol.7 免疫を整え、一日晴れやか!
“春先のなんとなく不調”対策
(前編)

2023.06.30

季節の変わり目に感じる“なんとなく不調”。
春先に不調を感じる人は、なんと2人に1人にも上るといわれます。
その“なんとなく不調”に大きく関係しているのが、免疫。継続するのが難しい免疫ケアに取り組むヒントも、朝にあったのです!

宮田俊男

監修:宮田 俊男 先生

日本の医療の在り方に一石を投じる、都市型の地域包括医療クリニック〈みいクリニック〉理事長(東京都渋谷区、大阪府箕面市)
早稲田大学理工学術院教授/吉本興業企画笑来塾塾長

“なんとなく不調”の正体は、
激変する気温への適応不足。

「春、なんとなくカラダの不調を訴える方はたくさんいます」と語るのは、東京や大阪といった都会で地域包括医療クリニックを開業する、宮田俊男先生。子どもから高齢者、地域企業の従業員など幅広い患者に接し、さらに大学で教鞭を執るなどアクティブに活動するドクターです。

「なんとなくカラダが不調な主な原因は、季節の変わり目の寒暖差など、気温の変化にカラダがすぐに適合できないためだと考えられます」
宮田先生のクリニックにも、朝起きられない、なんとなく頭痛がする、会社や学校になんとなく行きたくない、遅刻しがち、夜になかなか眠れない、仕事の質が下がったなどの相談が寄せられているといいます。

「血液検査をしても、X線検査でも、原因を特定できないケースが多くあります」
宮田先生の言葉を裏付ける調査結果が、この3月に公開されました。下に紹介する「体調管理に関する調査」です。
この調査では、春の不調を2人に1人が感じており、しかもそのうちの90%以上の人が、栄養バランスの取れた食事、質の高い睡眠、運動のいずれかが継続的にできていないという結果が出ています。

3〜4月の季節の変わり目、“なんとなく不調だ”を感じる。感じる 44.8%/感じない 55.2% 【感じない人たちが心がけてきたこと】規則正しい生活を心がける 29.2%/栄養バランスの良い食事 25.9%/質の良い睡眠 23.6%/適度な運動 23.2%【感じたうち】「他の時期と比べて健康管理が難しい」74.1%/「仕事の環境の変化でストレスを感じる」67.0%/「環境の変化や忙しさで良質な睡眠を取れない機会が増える」53.8% “なんとなく不調”を防ぐヒントは、「感じない人」が心がける4項目。 出典/「体調管理に関する調査」(インターネットアンケート調査)
コロナ前に比べ、自宅で過ごす時間が増えた。増えた 57.7%/減った 6.0%/変わらないどちらとも言えない 36.3% コロナ禍は、春の“なんとなく不調”にも影響を与えている。うち64%は自宅にいることがストレスに感じる機会があると答えている:好きなタイミングで外出できない 58.9%/誰とも話せないことにストレスを感じる 32.4%/自宅にいるのに身なりを整えなければいけない 18.8%/リモートワーク 16.7% 出典/「体調管理に関する調査」(インターネットアンケート調査)
睡眠に満足できていない理由。“なんとなく不調”の中でも、睡眠には、さまざまな課題が浮き彫りになった。睡眠時間にばらつきがある 35.4%/寝つきが悪い 41.6%/夜中に起きてしまう 50.0%/寝起きがスッキリしない 29.2%/寝ても疲れが取れない 41.2%/トイレが近い 26.6%/眠りが浅い 38.0%/いびき・無呼吸の状態がある 13.9%/歯ぎしりをしてしまう 11.7%/睡眠時間を十分に確保できない 28.1%/体が痛くなる 12.8%/その他 2.6% 出典/「体調管理に関する調査」(インターネットアンケート調査)
持続的に健康管理を続けるのは難しいと感じている。難しい 65.9%/難しくない 34.1% 実際は、規則正しい生活、食事や睡眠の改善、適度な運動などに、十分に取り組めていない人が多い。 出典/「体調管理に関する調査」(インターネットアンケート調査)

「こうした“なんとなく不調”によって、免疫も低下しています。カラダの防御システムである免疫が低下したまま不規則な生活を続けると、感染症などのリスクが上がります。例えば、コロナワクチンの接種によって免疫が獲得されていても、体調管理が十分でないと、感染のリスクは高まってしまいます。さらに、一度コロナに罹った人でも、免疫力が消耗されているので、本来のレベルに戻るまでに時間がかかる可能性があります」

先ほどの「体調管理に関する調査」でも、コロナ禍によって在宅時間が増えたことで、多くの人がストレスを抱えている実態が浮き彫りになりました。
「特に深刻なのは、運動不足です。リモートワーク、通勤や通学の機会まで減ったので、顕著です。その結果、外出する機会が減ったにもかかわらず、(矛盾することに)風邪をひきやすくなったりしています。やはり、動物としての人間にとって、運動は必要なものなのですね」
宮田先生は、免疫を下げる悪い習慣として、下記の5項目を挙げています。

免疫を下げる“要改善”習慣

  • 依存性の高いこと (夜のスマホ操作やゲーム、 暴飲暴食)
  • 不規則な生活
  • 野菜・果物を食べない
  • 人付き合いを避ける
  • 運動は「できる時だけ」

「運動は“できる時だけ”ではなく、仕事のスケジュール同様、定期的にしないと継続できません。気温の変化にカラダが追いついていなくて“なんとなく不調”になった方が多いので、“乾布摩擦をしろ”とまでは言いませんが、外の気温に触れることで改善の可能性が高まります。花粉症の季節ですが、治療や対策を万全にして外を歩くといいですよ」

さらに、宮田先生が懸念するのが、依存性の高い行動だといいます。
「DX化が進んで、スキマ時間も仕事を詰め込まれてしまうケースが増えています。そうした人の中には、深夜営業のお店やコンビニで、本来は不必要なほど大量の食品を買って、それらを口にしています。その結果、最近は30代でも血液検査での肝臓の値が悪く、脂肪肝が疑われたり、胃が荒れて逆流性食道炎になる人が増えています。深夜のスマホ操作やゲームの依存性は問題になっていますが、暴飲暴食の依存性も深刻です」

人間関係が希薄になることも、免疫が下がるリスクです。
地域で「看取り」など訪問医療にも関わる宮田先生は、夫婦が死別することで免疫を下げる事例を数多く見てきました。
「介護保険などで、地域のケアマネージャーや包括支援センターに上手くアクセスできた方々は、皆さん元気です(笑)。
でも、そうしたサービスに上手く入れなかった方たちがこぼれて二極化しています。若いうちから、仕事以外や、地域の友人を持つことが大切です。他にも、要改善のリストで思い至った方は、意識的に改善したいものですね」

65%以上の人が感じている生活習慣の改善の難しさ。

「体調管理に関する調査」でも、生活習慣の改善を頭では理解していても、
継続的に続けにくいと多くの人が感じていることが判明しています。
次回コラムでは、宮田先生と一緒に免疫力アップの具体策を考えていきます。
そのキーワードは、もちろん“朝活”にあり!

記事出典:『Tarzan』2023年4月6日発売号掲載 ©マガジンハウス