感染症の種類から日常生活の注意点まで。“免疫”のことを『分かりやすく』発信していきます。

vol.10 この冬の感染症の特徴

2024.01.15

新型コロナウイルス感染症による行動制限が落ち着いてきましたが、それに伴いさまざまな感染症が流行し始めています。本コラムでは最近の感染症の流行とその対策についてご紹介します。

北村義浩

解説・監修:北村義浩 先生

日本医科大学医学教育センター副センター長、特任教授。
医学博士

複数の感染症流行が予想される

2023年5月に新型コロナウイルス感染症の感染症法における分類が5類となりましたが、その後の第9波は非常に大きな流行でした。新型コロナウイルス感染症の流行が収束し始めた9月下旬から、例年より1ヶ月以上早く季節性インフルエンザの流行が始まり、冬前に落ち着く様子を見せていますが、今後、別のタイプのインフルエンザが流行し、今シーズンは複数の波が来ると予想されています。
 また多くの専門家が不思議に思っていることは、プール熱ともいわれる咽頭結膜熱がこの冬に流行していることです。アデノウイルスによって起こるこの感染症は、恐らく過去25年ぐらいの中で最も大きな波になっており、さらに冬にこれだけ巨大な流行が起きることは、諸外国を含めてもありません。なぜこのようなことが起こっているのかについての解明は必要ですが、解明しているうちに罹患して辛い思いをしないように、感染症対策が必要です。

人/定点(インフルエンザ・コロナウイルス)、人/定点(プール熱)

内臓脂肪に要注意

冬は太りやすいと自覚する人が多いかもしれませんが、内臓脂肪に要注意です。
新型コロナウイルス感染症流行時に、肥満で特に内臓脂肪が蓄積している人は糖尿病や腎臓病などの持病がある人と同様に重症化リスクが高く、集中治療室で体外式膜型人工肺を使用するケースが多いことが明らかとなりました。
内臓脂肪組織から分泌されるホルモンのバランスが乱れて持続的な全身の炎症状態=「慢性炎症」が起こり、この慢性炎症が免疫機能の低下をもたらし、感染症の重症化などを引き起こしてしまうと考えられています。(詳細はこちら:免疫低下に関連する要因 肥満
 また、感染症と戦う免疫系の司令塔であるプラズマサイトイド樹状細胞(pDC)は、ウイルス感染時に活性化されるとインターフェロンを産生してウイルス増殖を抑制します。そのため内臓脂肪を減らして免疫系を健全に保ち、pDCがインターフェロンを産生しやすい体をつくることが大切で、これらは同時進行で行う必要があります。

今冬は複数の感染症流行が予想されるので、適切な食事、適度な運動、規則正しい生活、十分な休養・睡眠を心がけ免疫系を活性化しましょう!