感染症の種類から日常生活の注意点まで。“免疫”のことを『分かりやすく』発信していきます。

vol.12 セルフケアのすすめ
手洗い・うがいはどこまで
効果があるのか?
~新型コロナウイルス感染
自己負担増加に備えて~

2024.04.26

いよいよゴールデンウィークが始まります。人混みで混雑した場所にお出かけされる方もいらっしゃるかと思いますが、同時に風邪や新型コロナウイルス感染症、麻疹など感染症のリスクが高まってしまいます。また、4月から新型コロナウイルス感染による医療費の自己負担額が増加しました。このような時は、感染症から身を守ることが重要であり、そのためにはセルフケアが大切です!

宮田俊男

監修:宮田 俊男 先生

日本の医療の在り方に一石を投じる、都市型の地域包括医療クリニック〈みいクリニック〉理事長(東京都渋谷区、大阪府箕面市)
早稲田大学理工学術院教授/吉本興業企画笑来塾塾長

手洗いの効果

まず身近なセルフケアと言えば、手洗い・うがいです。「家に帰ったら必ず手洗い・うがいをしましょう」という事は昔からよく言われており、実行している人も多いと思います。その手洗いとうがい、どこまで効果があるのでしょうか?

手洗い

日常生活を送るうえで、例えば電車のつり革や手すり、ドアの取っ手や買い物かご等、手はさまざまな場所に触れます。
見た目には分からなくても細菌やウイルスが付着している可能性があります。また、人は無意識に顔を触ってしまいますが、手指にウイルスが付着していると、目、鼻、口腔内の粘膜を経由してウイルスが体内に侵入してきてしまいます。
そのため、顔に触れる前に手を洗うことで、ウイルスが原因の風邪など、感染症を予防できる可能性が高くなります。
実際、手洗いについては多くの研究報告がありますが、職場や家庭内、学校における手洗いの効果を検証した7つの研究を統合し分析した結果では、手洗いにより急性呼吸器感染症が16%減少したと報告されています。

Jefferson T et al, Cochrane Database Syst Rev 2020 : 11 :CD006207

うがい

うがいは日本では古くから広く普及した行動であり、手洗いよりエビデンスは少ないものの、のどや口の粘膜に付着した細菌やウイルスを洗い流したり、のどの乾燥を防ぐと考えられています。2~6歳の小児を対象とした研究では、うがいは発熱性疾患の頻度を下げるかもしれないと報告されています。

Noda T et al, J Epidemiol. 2012; 22(1): 45–49.

このように、手洗いやうがいについては一定の効果が示されています。
ただ注意すべきは感染率を減少させても完全に防ぐことができないという点です。

新型コロナウイルスの支援終了、自己負担へ

新型コロナウイルスは感染症法上の位置づけが、2023年5月に「5類」になり、その後、患者や医療機関への財政支援を段階的に縮小し、2024年4月からは季節性インフルエンザと同様の対応とする方針となりました。
これまで行政からさまざまな支援を受けてきましたが、支援策のうちコロナ治療薬については、より高額の自己負担が求められるようになりました。これまでコロナ治療薬の自己負担額は最大9000円となっていましたが、5日間の薬の処方で1万5000円~3万円近くを自己負担する可能性があります(※医療費の窓口負担が3割の人の場合)。ワクチンに至っては無料で受けられましたが、現時点では自己負担額を最大で7000円程度にする方針となりました。
 このように新型コロナウイルスに感染したときの自己負担は2024年4月からとても大きくなりました。一方で、現在主流の変異株(2024年4月現在)は、当初よりも重症化しにくくなっているものの、依然として味覚嗅覚障害や倦怠感などの後遺症が続くという新型コロナウイルス特有の症状があります。まずはなるべく感染しないようにすることが大切です。

感染症を防ぐにあたり、手洗いやうがいも一定の効果があり、セルフケアとして良い行動の一つです。ただしそれだけで完全に防ぐことはできません。免疫力を高める、健康状態を維持するなどさまざまな対策を組み合わせることでしっかり予防していきましょう!