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こどもの成長と免疫の成長
免疫は生まれてすぐから大人と同じような機能があるわけではありません。生まれて間もない乳幼児期は免疫の機能が十分ではなく、風邪などの病気になりやすい状態です。
免疫のしくみには、生まれたときから備わっている「自然免疫」と、成長にともなって強くなっていく「獲得免疫」の2つがあります。
「獲得免疫」は、一度出会ったことのあるウイルスや細菌などの害のある物質を覚えて、最適な撃退方法を学習することで成長します。一度かかった病気にはかかりにくくなったり、かかったとしても症状が軽くなったり、といった経験があると思いますが、それは獲得免疫のおかげです。ワクチン接種はこの仕組みを応用して、感染症を予防しています。
では、こどもの成長と免疫の成長はどのように関係しているのでしょうか。
「スキャモンの発育曲線」(下図)は、大人のからだや機能に成長するまでの変化の様子をグラフにしたものです。このなかの「リンパ型」は、免疫のはたらきに関わるリンパ組織※2の発育を示しているので、これを「免疫の成長」として見ていきましょう。
グラフを見てわかるように、免疫は生後間もなくから12歳頃にかけて一気に成長し、その後緩やかに減退していきます。この急激な成長の間にたくさんの有害な微生物や物質に触れることで「獲得免疫」の学習が進みます。その後、学習したことから必要なものだけを残すことで、大人になった後の免疫ができあがります。
スキャモンの発育曲線
出典:Scammon RE. Am J Phys Anthropol.,
10(3): 329-336.(1927)
また、成長にともなって触れてきた細菌そのものが、免疫の役に立っています。
細菌というと、からだに悪いことをするから、免疫でやっつける対象じゃないの?と思うかもしれません。例えば、「乳酸菌は健康にいい!」と聞いたことがありませんか?この乳酸菌もからだの役に立つ細菌のひとつだとすると、イメージしやすいのではないでしょうか。
健康なからだの中には、数百から数千種類の細菌が100兆~1000兆個も住んでいて、その総重量は1~2キログラムになると言われています。
特にからだの内側と外側をへだてている、皮膚や口の中、腸(食べ物の通り道)に数多く住んでいて、「細菌叢(さいきんそう)」または「フローラ」と呼ばれる多種多様な細菌の集団をつくっています。(下図)
細菌叢に含まれる細菌の種類は、こどもの頃に触れた細菌によってある程度決まります。そのため、他の有害な細菌が入り込もうとしても追い出されてしまい、結果としてからだを守るバリアとして活躍します。
特に腸の細菌叢(腸内フローラ)は、含まれる細菌の種類と量のバランスによって、病気のなりやすさや、体調の変化に影響することがわかっています。腸内フローラは3~5歳までにある程度決まってしまい、その後は大きく変えられません。
細菌叢(フローラ)
こどもが成長する時期は、免疫を成長させるためにも重要な時期。このころに育った免疫が、大人に成長した後の免疫のはたらきを決定づけます。すこやかなからだとこころをもった大人に成長するために、免疫を正しく育てていきましょう。
※2
リンパ組織:免疫に関わる細胞(リンパ球※3)を生み出す組織や、免疫がはたらく場所となるからだの組織。骨髄、胸腺、リンパ節、脾臓など。
※3
リンパ球:外敵の認識や攻撃などの免疫の機能を担う細胞で、NK(ナチュラルキラー)細胞、B細胞、T細胞などがあり、それぞれが連携して免疫機能を担っている。
【こどもの免疫を成長させるために大切なことは?】