感染症の種類から日常生活の注意点まで。“免疫”のことを『分かりやすく』発信していきます。

免疫と「イイ調子!」の親密な関係

「免疫」と聞くと、新型コロナウイルスなどの病気の原因から身を守るもの、というイメージではないでしょうか。
もちろん、こうしたはたらきは免疫の重要な役割ですが、日常で感じる「イイ調子!」にも大きく関わっています。

お肌の調子がいいのは
免疫のおかげ!?

お肌の調子がいいと、気分もよくなりますよね?そんなお肌と免疫の関係について紹介します。
お肌の役割はさまざまありますが、からだの外側から内側を守る役割もそのひとつです。
紫外線、細菌・ウイルスなどの微生物、毒物などの有害な物質、熱などを遮断するバリアとなって、からだの内側へのダメージを減らしています。
お肌の表面の組織を「表皮」と呼びますが、その表皮を詳しくみると、表面に角層(かくそう;角質層ともいう)があり、その下に顆粒層(かりゅうそう)、有棘層(ゆうきょくそう)、基底層(きていそう)と続いています。(下図)
お肌の免疫は、表面に住み着いた細菌叢(フローラ)と、顆粒層に存在するタイトジャンクション、そして有棘層から顆粒層にかけて存在するランゲルハンス細胞が重要な役割を果たしています。

お肌のバリア機能

[ランゲルハンス細胞による免疫バリア]

お肌のバリア機能イメージ

「肌の表面に細菌が住み着いているの?汚い!」と思うかもしれませんが、この細菌はお肌を清潔に保つうえでも大切です。
お肌に住み着いている細菌の種類は個人差がありますが、数百~千くらいあって、バランスを取りながら仲良く暮らしています。ここに、他の有害な細菌がやってくると、もうここにはあなたが住める場所はないよ、とばかりに追い出してしまうのです。
これによって悪さをする細菌がお肌で増殖したり、からだの中に侵入したりすることを防いでくれます。
細菌の種類や数のバランスは免疫の調子や過度な洗浄などによって変化しますが、大きくバランスが崩れると、悪さをする細菌が増えたり、外からの悪い細菌の侵入を許したりすることで、お肌に炎症が起こり、肌荒れにつながります。

顆粒層にあるタイトジャンクションは、その名前のとおり、肌の細胞どうしが強くくっついていて、物理的に細菌などが通り抜けにくくしています。
有棘層にあるランゲルハンス細胞は、やってきた細菌などの有害な物質を体内に取り込んで、無害な状態にする役割を持っている免疫細胞です。ランゲルハンス細胞からのびる腕は顆粒層のタイトジャンクションを超えて角層にかけてのびており、タイトジャンクションでせき止められた有害物質もとらえて、体内への侵入を防いでいます。
タイトジャンクションもランゲルハンス細胞も、免疫の調子が悪くなるとはたらきが弱まることがわかっており、お肌のトラブルの原因となります。
お肌の調子を整えるためには、免疫を意識することが大切!ということがお分かりいただけたでしょうか。

免疫の調子がいいと仕事や
勉強の効率もあがる!?

仕事や勉強がはかどると「イイ調子!」と感じますよね。
からだとこころの調子がいいと、からだの動きや思考や集中といった脳のはたらきもよくなると感じませんか?
それと同じことが免疫でも起きていて、からだを守る免疫のはたらきが活発になります。
逆にからだとこころの調子が悪くなると免疫のはたらきも弱くなります。※1そうなると病気にかかりやすくなったり、疲労やストレスがたまったり…そしてますます調子が悪くなる…といった悪いスパイラルに陥ります。
国内の研究から、仕事の満足感が低いと、免疫細胞のひとつであるNK細胞※2のはたらき(活性)を弱めることがわかっています。(下図)

仕事の満足度とNK細胞活性

NK細胞のはたらき

【対象と方法】
健康なホワイトカラー306人(男性165人、女性141人。平均年齢36歳)を対象に、仕事の満足度に関する4項目の質問への回答、ならびに血液検査による免疫の状態の調査を行った。

Nakata A, et al. Brain Behav Immun. 2010; 24(8):
1268-1275.より改変

キリンの研究でも、免疫のはたらきを高める取り組みをすることで、体調がよいと感じる時間が増え、労働パフォーマンスも向上することがわかっています。(下図)

労働パフォーマンス

【対象と方法】
20歳から65歳までの健康な会社員226人を対象に、ランダムに2つのグループに割り付け、L. lactis Plasma配合のヨーグルトを摂取する期間と摂取しない期間をそれぞれそれぞれ4週間設け、片方のグループは摂取する期間から摂取しない期間の順に、もう片方のグループは摂取しない期間から摂取する期間の順に実施し、各期間の終了時点のアンケートによって評価を行った。

Kokubo T, et al. Prev Nutr Food Sci. 2020; 25(2):
140-145.より改変

こうした結果から、仕事などのパフォーマンスと免疫の調子が関係していることがわかります。
免疫のはたらきを高める取り組みは、からだとこころの調子を高めることにつながり、結果として労働パフォーマンスの向上にも貢献している、と言えそうです。お肌の調子や労働パフォーマンス以外にも、日常で感じる「イイ調子!」の多くに免疫は関わっています。その話はまた別の機会に…。

※1: [出典] ファルマシア. (2017) Vol. 53 No. 7: 681-685  
Jpn. J. Clin. Immunol., 39 (2) 96~102 (2016)
※2: ナチュラルキラー細胞。生まれつき備わっている免疫(自然免疫)として活躍し、全身でウイルス感染細胞などを見つけ出して攻撃、排除する。

【「イイ調子」をキープするにはどうしたらいいの?】

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