感染症の種類から日常生活の注意点まで。“免疫”のことを『分かりやすく』発信していきます。

vol.26 免疫力を高める3つの方法
【運動編】
-運動不足は風邪のもと?-

2024.12.06

12月になり、いよいよ冬本番です!

みなさんの周りでは新型コロナインフルエンザ風邪といった感染症
は流行っていませんか?

クリスマスや大晦日、お正月といったイベントが目白押しの季節。

しっかりと免疫力を維持して予防をしていきたいですよね。

今回は連続コラムの第三回目として「運動」についてまとめていきます。

「運動」と一口に言っても、実は免疫力を下げてしまう運動のやり方もあります。

この記事では免疫力を高める「運動」の方法を紹介していきます。

ぜひこの冬の感染症予防や対策にお役立てください!

そもそも免疫力って何?

免疫力とは体内に侵入してくる「ウイルス」や「細菌」から、身体を守ってくれている防御システムのことです。

免疫力がしっかり維持されていると風邪やインフルエンザ、新型コロナといった感染症にかかりにくくなります。

免疫については下記のページでより詳しく説明しています。

しかし、寝不足偏った食事運動不足などによって免疫力が低下すると、こういった感染症にかかりやすくなるほか、かかった時に重症化しやすくなるといったリスクも高まります。

また運動においては、ただ闇雲に運動をすれば良いということでもなく、やり方によっては逆に免疫力を低下させてしまうこともあります。

この冬の感染症に負けないために、免疫力を高められる運動の方法についてしっかりと理解しましょう!

運動すると免疫力は
上がる?下がる?

ではどういった運動で免疫力は低下するのでしょうか?

まずは運動と免疫の関係について論文のデータで見ていきましょう。

まずはほとんど運動をしない人(週に1日未満)日常的に軽めの運動をする人(週1~4日または週5日以上)を比較したグラフです。

運動習慣と
上気道感染症罹患日数

(日/12週間)- 運動習慣(日/週)

参考:鈴井正敏, 運動すればかぜをひかなくなりますか?, 人文科学論集 第57輯(2011.3)

このグラフを見ると、ほとんど運動をしない人は風邪(上気道感染症)にかかるリスクが高まってしまうことがわかります。

次に、激しい運動を行った人(マラソンランナー)の風邪のひきやすさを表したグラフが下記です。

ハードトレーニング後の
風邪罹患率

激しい運動で風邪をひきやすくなった

参考:56kmのマラソンレース後、2週間における風邪罹患率
**は有意水準0.01で、統計学的に有意差あり
出典:Med Sci Sports Exerc. 26:128-139 (1994)

このグラフを見ると、激しい運動をしすぎても風邪(上気道感染症)にかかるリスクが高まってしまうことがわかります。

それぞれどうして免疫力が低下してしまうのでしょうか?

ほとんど運動をしない人

運動不足によって免疫が低下する理由としては、一般的に運動による免疫力の上昇効果が得られないためと言われています。

私たちの身体を守っている免疫細胞は、運動をすることで増加・活性化することがこれまでの研究から明らかになっています。

たとえば、1時間以内の比較的短時間の運動では、運動の強度が上がるにつれてリンパ球(特にナチュラルキラー細胞)とよばれる免疫細胞が増加することが分かっています。

運動をしないとこういった免疫細胞の増加・活性化が行われないため、結果的に免疫力が低下してしまう原因の一つとなります。

参考:鈴木克彦, 運動と免疫, 日本補完代替医療学会誌, 2004年1巻1号 31-40

激しい運動をする人

逆に、激しい運動によって免疫力が低下してしまうケースもあります。

その理由としては「オープンウィンドウ」という現象が関係していると言われています。

「オープンウインドウ」とは、激しい運動をするとそのストレスによって免疫機能が著しく低下し、数時間~数日ほど免疫機能が低下してしまう現象のことです。

激しい運動による
一時的な免疫抑制

一次的な免疫力の低下

参考:運動すれば風邪をひかなくなりますか?, 人文科学論集, Vol 57 (2011.3) 一部改変

より詳細な内容については下記のページにもまとめています。

免疫力を高める運動のやり方

ではどういった運動なら「適度な運動」となり、免疫力を高められるのでしょうか?

厚生労働省が発表している「健康づくりのための身体活動基準2013」というガイドラインでは下記の運動を毎日継続して行うことを推奨しています。

  • 歩行またはそれと同等以上の運動
    (歩く、犬の散歩をする、そうじをする、自転車に乗る、速歩きをする)を毎日60分間行う。
  • 上記に加えて、息が弾み汗をかく程度の運動を毎週60分間行う。

参考:厚生労働省|健康づくりのための身体活動基準 2013 (概要)

例えば、毎日60分の運動を全てウォーキングで行った場合、約8,000~10,000歩の歩数となるのですが、いきなり取り組むにはなかなかハードルが高い印象を受けますよね・・・。

これらの運動は継続して行っていくことが何よりも大切ですので、いきなり60分間から始めるのではなくまずは軽めの運動から始め、少しずつ運動の習慣を付けていくことが重要です。

ちなみに過去の研究では、運動をあまり行わなかった人よりも、20分以上の運動を習慣的に続けた人の方が風邪をひかなかったというデータが報告されています。

冬期 12週間の風邪ひき日数

冬季の12週間に、18~85歳の男女1002人を対象に行った観察研究。
適度な運動 (汗を軽くかき、心拍数が少し上がる運動を20分以上継続)を行った日数が多い人ほど風邪をひいた日数が少なかった。

出典:Nieman DC, et al. Br J Sports Med.2011;45:987-92.より改変

まずはこの20分間を目標に実施してみてはいかがでしょうか?

免疫力を高める運動の例

ここからは毎日無理せずできる運動の例をご紹介します。

いきなり60分間の運動を行うのは大変ですし、なにより身体にも負担がかかるので、下記のような軽めの運動から始めて徐々に運動の習慣を付けていくことをおすすめします!

  • エレベーターやエスカレーターではなく階段を使ってみる
  • ラジオ体操を毎朝やってみる
  • ストレッチやヨガ、軽い筋トレなどを行ってみる
  • ひと駅手前で降りて歩いてみる

60分間の運動は大変でも「このくらいならできそう!」と思っていただけた方も多いのではないでしょうか?

実はこのくらいの運動であっても、健康には非常によい効果があるため、少しずつ習慣づけていくことがとても大切です。

厚生労働省はガイドラインの中で『+10(プラステン):今より10分多く体を動かそう』というメッセージを発信しているのですが、今よりも毎日10分間多く体を動かすだけで「死亡のリスクを2.8%」「生活習慣病発症を3.6%」「ガン発症を3.2%」「ロコモ・認知症の発症を8.8%」低下させられるとのことです。

参考:アクティブガイド | e-ヘルスネット(厚生労働省)

免疫力を高めると同時に、これらの健康効果も期待できる適度な運動

ぜひこの冬に始めてみませんか?

感染症にかからないためにすべきこと

今回の記事では、免疫力を高める方法として「運動」を中心に紹介しました。

しかしお仕事や子育て、学業など忙しい日常生活の中では、1日1時間を運動の時間に充てるのは大変ですよね・・・。

そんな時の選択肢として、不足しがちな栄養素をサプリメントで補うことも大切な考え方のひとつです。

マルチビタミンのような栄養素をまとめて摂取できるものを活用するのも良い方法です。

また、免疫機能の維持をサポートすることが期待される食品も取り入れながら、日々元気に過ごしていきましょう!

また「インフルエンザ」や「新型コロナ」に限らず、多くの感染症は原因となるウイルスや細菌が身体に侵入することが第一の原因となります。

そのため、基本的な感染症対策である「①マスクの着用」「②こまめな手洗い・手指消毒」「③定期的な換気」も合わせて実施していくことがとても大切です。

マスクの効果については
以前の記事に詳細をまとめています

これからの冬本番、感染症にかからないようにしっかり対策していきましょう!