感染症の種類から日常生活の注意点まで。“免疫”のことを『分かりやすく』発信していきます。

vol.22 【人食いバクテリア】
劇症型溶連菌とは?
A群溶連菌
との症状の違いは?

2024.11.10

溶連菌(溶血性レンサ球菌)には多くの種類があり、一般的にはのど風邪を引き起こす細菌として知られています。

しかしまれに「劇症型溶連菌(劇症型溶血性レンサ球菌感染症)」を発症することがあり、その重篤な症状から発症すると致死率が3割に上ると言われています。

別名「人食いバクテリア」ともいわれる「劇症型溶連菌」ですが、恐ろしいことに2024年には過去最多の患者数を記録しました。

劇症型溶連菌
(劇症型溶血性レンサ球菌感染症)
患者数累計

劇症型溶連菌(劇症型溶血性レンサ球菌感染症)患者数累計

参考:NIID 国立感染症研究所

本記事ではそんな「溶連菌」について、症状やかかってしまった時の対処法等をまとめています。
ぜひ予防や対策にお役立てください!

一般的な溶連菌と
劇症型溶連菌の違いとは?

一般的に私たちが耳にする、いわゆるA群溶連菌(A群溶血性レンサ球菌咽頭炎)は感染してもほとんどが発熱、咽頭炎、皮膚の発疹などの症状にとどまります。

また、子どもがよくかかる感染症というイメージもありますよね。

一方で「劇症型」は30歳以上の大人に多く、腕や足の痛み、腫れ、発熱、血圧の低下などから症状が始まります。

さらにその後は組織が壊死・多臓器不全等を来たし、場合によっては数時間で急激に症状が悪化することもある恐ろしい病気です。

そのため、早期に治療を開始することが重要な感染症のひとつとなります。

ご自分やご家族が発症してしまったもしもの時に迅速に対処できるよう、下記にまとめた「劇症型A群溶連菌の違い」について予め理解をしておきましょう。

劇症型とA群溶連菌の違い

劇症型 A群溶連菌
かかりやすい
年齢
30歳以上の大人に多い 子供に多い
初期症状 ・発熱や悪寒など風邪様の症状
・四肢の疼痛や腫脹
・創部の発赤
・乳幼児では咽頭炎、年長児や成人では扁桃炎
・気管支炎
・猩紅熱といわれる全身症状(発疹、イチゴ舌等)を呈することがある
後発症状 ・組織の壊死
・呼吸状態の悪化
・肝不全、腎不全などの多臓器不全
・リウマチ熱や急性糸球体腎炎などの二次疾患を起こすことがある
注意する
ポイント
症状の進行が非常に速いため、四肢の疼痛、腫脹、発熱などの感染の兆候がみられる場合は、速やかに医療機関を受診する 腎炎などの合併症を防ぐため、症状が改善しても主治医に指示された期間は薬を飲むことが大切

参考:
厚生労働省|劇症型溶血性レンサ球菌感染症(STSS)
厚生労働省|A群溶血性レンサ球菌咽頭炎
東京都保健医療局|A群溶血性レンサ球菌咽頭炎 (溶連菌感染症)について

かかってしまった時の対処法は?

劇症型」は非常に恐ろしい感染症のため、感染の兆候がみられた場合にはとにかくすぐに医療機関を受診しましょう。

一方で「A群溶連菌」も発熱や全身に発疹が出たりと、かかると非常に辛い病気のひとつです。

劇症型」はもちろんですが「A群溶連菌」も自然治癒では非常に長引くため、早急に医療機関を受診し、治療を開始することが重要です。

治療法

劇症型
抗菌薬(ペニシリン系)の投薬が第一選択肢となります。

しかし抗菌薬による治療のみでは改善が困難な場合が多く緊急手術によって壊死した病巣を除去したり、集中治療室に入って全身状態の管理が必要となる場合があります。

A群溶連菌
抗菌薬(ペニシリン系)での治療を行います。

腎炎などの合併症を防ぐため、症状が改善しても主治医に指示された期間、薬を飲むことが大切です。

予防接種はある?

「劇症型」は非常に恐ろしい感染症ですが、2024年11月現在、劇症型溶血性レンサ球菌感染症とその原因である溶血性レンサ球菌に有効なワクチンはありません。

また「溶血性レンサ球菌」は菌種が多く、一度かかったとしても何度もくり返し発症してしまう可能性があります。

そのため日々の感染症対策をしっかりと行うことで、周りの人からうつらない、周りの人にうつさないよう徹底することが非常に重要です。

感染症にかからないためにすべきこと

劇症型」や「A群溶連菌」に限らず、多くの感染症の予防には、「①マスクの着用」「②こまめな手洗い・手指消毒」「③定期的な換気」といった基本的な感染症対策が有効です。

これは、感染症の多くが「飛沫感染(+エアロゾル感染)」と「接触感染」が主な感染経路となっているためであり、これらの感染経路を遮断することが効果的な対策となります。

マスクの効果については
以前の記事に詳細をまとめています

今回の記事の内容で、溶連菌を予防するためのワクチンが無いという部分に驚いた方もいらっしゃったかと思いますが、意外にもよく耳にする感染症には特効薬やワクチンが無いケースも多いです。

感染症を防ぐために、基本的な感染症対策をしっかり行っていきましょう。

また、細菌を防ぐだけではなく自身の「免疫力を低下させない」こともとても重要となります。

免疫力を低下させないよう日々の生活習慣には十分気を付けましょう!

有効な免疫対策

  • しっかりとした睡眠をとる
  • 適度な運動をする
  • バランスの良い食事をとる
  • サプリメントを摂取する

キリンでは、新型コロナウイルスだけでなくインフルエンザウイルスの感染抑制や風邪の罹患率の低下が報告されている「乳酸菌」の研究を約15年間に渡り行ってきました。詳細は下記のページにまとめていますのでぜひご覧ください!
科学の力であなたの生活のお役に立てたら嬉しいです!