感染症の種類から日常生活の注意点まで。“免疫”のことを『分かりやすく』発信していきます。

vol.20 子どもがかかりやすい感染症

2024.10.25

子どもがかかりやすい感染症には、季節性インフルエンザ、RSウイルス感染症、感染性胃腸炎(ロタウイルス)、ノロウイルス感染症、手足口病、マイコプラズマ肺炎など沢山の種類があります。
昨日まで元気に遊んでいたのに、突然お子さんの体調が悪くなる…なんてことはよくありますよね。

本記事では、主な感染症についての症状や、かかってしまった時にどう対処すればよいのか、
いつから登校や登園ができるようになるのか等について詳しくまとめました。
ぜひお役立てください!

本記事は「厚生労働省|保育所における感染症対策ガイドライン(2018 年改訂版)を元に作成しています。

季節性インフルエンザ

病原体:インフルエンザウイルス
感染経路:飛沫感染、接触感染

症状

・突然の高熱症状が3~4日続く
・38℃以上の発熱、頭痛、咳、鼻水、筋肉痛、関節痛等の症状が出る

経過

・潜伏期間は1〜2日
・通常は1週間程度で回復

登園・登校の目安

発症した後5日が経過し、なおかつ熱が下がった後2日(幼児では3日)は経過していること

治療方法

インフルエンザの治療薬は大きく分けて「ノイラミニダーゼ阻害薬」と「キャップ依存性エンドヌクレアーゼ阻害薬」の2種類があります。
代表的な薬としては下記の5種類がよく知られています。
吸入タイプ:リレンザ®・イナビル®
内服タイプ:タミフル®・ゾフルーザ®
点滴タイプ:ラピアクタ®
年齢や症状に応じて薬が選ばれるため、医師の指導に従って服用するようにしましょう。

予防方法

インフルエンザには「予防接種(不活化ワクチン)」があります。
接種すれば絶対にかからないというものではないですが、発病の予防や重症化予防に一定の効果があるとされています。
年齢によって接種回数が異なるため、接種の際は下記の内容に注意しましょう。

【13歳未満の子どもの場合】
インフルエンザ流行期に入る前に2~4週間(可能な場合は4週間)の間隔をあけて2回接種する。

※子どもは大人に比べて免疫が弱いため、1回の接種では十分な免疫を獲得しにくいと考えられています。そのためワクチン1回接種よりも2回接種が推奨されています。

【大人の場合】
インフルエンザ流行期に入る前にワクチンを1回接種する。

参考:厚生労働省|令和5年度インフルエンザQ&A

RSウイルス感染症

病原体:RSウイルス
感染経路:飛沫感染、接触感染

症状

・発熱、鼻汁などの軽い風邪様症状から重い肺炎まで様々
・初回感染時にはより重症化しやすく、特に生後6ヶ月以内に感染した場合は、細気管支炎、肺炎など重症化する場合がある
・大人では鼻炎といった軽い症状の場合が多い

経過

・潜伏期間は4~6日
・発熱、鼻汁などの症状が数日続く
・初感染した乳幼児の約7割は鼻汁等の上気道症状のみで軽快するが、約3割程度では咳が悪化し、喘鳴、呼吸困難などが出現する可能性がある

登園・登校の目安

咳やのど痛といった呼吸器症状が消失し、全身状態が良いこと

治療方法

残念ながら現在 RSウイルス感染症には特効薬はありません。
そのため基本的には対症療法(酸素投与、点滴、呼吸管理など症状を和らげる治療)を行うことで対処します。

予防方法

現状、60歳以上を対象としたワクチン、妊婦に接種するワクチン、対象者が限定されているワクチン以外のRSワクチンはありません。そのため、手洗い等の一般的な感染症対策を徹底することが重要です。

参考:厚生労働省|RSウイルス感染症Q&A(令和6年5月31日改訂)

ノロウイルス感染症

病原体:ノロウイルス
感染経路:経口感染、接触感染、飛沫感染

調理者がウイルスに感染している場合に食品が汚染され、食中毒となるケースが多く起きている。
患者の便やおう吐物には多量のウイルスが含まれており、感染力も非常に強いため注意が必要。

症状

・主な症状は吐き気、おう吐、下痢、腹痛
・発熱は軽度

経過

・潜伏期間は24~48時間
・症状が1~2日続いたあと軽快(後遺症はない)
・感染しても発症しないことや、軽い風邪のような症状の場合がある

登園・登校の目安

おう吐、下痢といった症状が治まり、普段の食事がとれるようになった段階。
ウイルスは便中に3週間以上排出されることがあるため、登園や登校を再開した後も注意が必要。

治療方法

残念ながら現在ノロウイルスに効果のある抗ウイルス剤はありません。そのため通常は対症療法が行われます。
また下痢止めは、病気の回復を遅らせることがあるため使用しないことが望ましいとされています。

予防方法

ノロウイルスについてはワクチンがないため、かからないようにするために下記の予防を徹底しましょう。
・食事の前やトイレの後には必ず手を洗う
・下痢やおう吐等の症状がある場合は、食品を直接取り扱う作業をしないようにする
・胃腸炎患者に接する方は、患者のふん便や吐ぶつを適切に処理し、感染を広げないようにする
・子どもやお年寄りなど免疫力の弱い方は、加熱が必要な食品は中心部までしっかり加熱して食べる

参考:厚生労働省|ノロウイルスに関するQ&A

ロタウイルス感染症

病原体:ロタウイルス
感染経路:経口感染、接触感染、飛沫感染

10~100個くらいのロタウイルスが口から入ることで感染。
ウイルスは患者の便に大量に含まれているため、たとえ十分に手洗いをしても手や爪に数億個ものウイルスが残っていることがある。

症状

・水のような下痢やおう吐が繰り返し起こる(重い脱水症状が数日間続くことがある)
・発熱や腹部の不快感などもよくみられる

経過

・潜伏期間は2~4日
・症状の多くは2~7日で軽快する

登園・登校の目安

おう吐、下痢といった症状が治まり、普段の食事がとれるようになった段階。
ウイルスは便中に3週間以上排出されることがあるため、登園や登校を再開した後も注意が必要。

治療方法

残念ながら現在ロタウイルスに効果のある抗ウイルス剤はありません。
そのため、脱水を防ぐための水分補給や体力を消耗しないように栄養を補給することなどが治療の中心となります。

予防方法

乳児を対象とした2種類のワクチン(単価と5価)が承認されているため、任意で接種を受けることができます。
単価ロタウイルスワクチン(2回接種)の場合は生後6~24週の間、5価ロタウイルスワクチン(3回接種)の場合は生後6~32週の間での接種となります。

※どちらのワクチンも1回目の接種は14週6日までが推奨されています。詳細については医療機関でご相談いただくのが確実です。

参考:厚生労働省|ロタウイルスに関するQ&A

手足口病

病原体:コクサッキーウイルスA6(CA6)、CA16、CA10、エンテロウイルス71(EV71)など
感染経路:飛沫感染、接触感染、糞口感染(便と一緒に排泄されたウイルスが口に入って感染すること)

手足口病にかかりやすい年齢層の乳幼児が集団生活をしている保育施設や幼稚園などでは非常に注意が必要。

症状

・口の中、手のひら、足底や足背(足の甲)などに2~3mmの水疱を伴う複数の発疹が出る
・約3分の1程度の患者に発熱がみられるが、38℃以下のことが多く、高熱が続くことは通常はない

経過

・潜伏期間は3~5日程度
・ほとんどの場合は3~7日のうちに軽快

登園・登校の目安

発熱や口腔内の水疱・潰瘍の影響がなく、普段の食事がとれるようになった段階。

治療方法

残念ながら手足口病に特別な治療方法はありません。
基本的には軽い症状のため、経過観察を含め、症状に応じた治療を行っていくことになります。

しかし、まれに髄膜炎や脳炎といった合併症や心筋炎などが起こる場合があるため、経過観察中は下記の症状に注意が必要です。
・高熱が出る ・発熱が2日以上続く ・おう吐する ・頭を痛がる ・視線が合わない ・呼びかけに答えない
・呼吸が速くて息苦しそう ・水分が取れずにおしっこがでない ・ぐったりとしている
上記のような症状がみられる場合は、医療機関への早急な受診をおすすめします。

予防方法

手足口病については有効なワクチンがないため、一般的な感染症対策を徹底しましょう。
接触感染を防ぐために手洗いをしっかりとすることや、排泄物を適切に処理することが重要となります。
特に保育施設などの乳幼児の集団生活では、職員と子ども達がしっかりと手洗いをすることや、おむつ交換時に排泄物を適切に処理すること、またタオルの共用は避けるといった対策が必要となります。

参考:厚生労働省|手足口病

マイコプラズマ肺炎

病原体:肺炎マイコプラズマ
感染経路:飛沫感染

患者の咳のしぶきを吸い込んだり、患者と身近で接触することにより感染する。
家庭や学校等の集団生活の場では特に注意が必要。

症状

・発熱や全身倦怠感(だるさ)、頭痛、痰を伴わない咳などの症状がみられる
・咳は熱が下がった後も続く
・多くは軽症状だが、肺炎となって重症化することもある
・小児の方が軽くすむことが多い

経過

・潜伏期間は2~3週間と長い
・咳は熱が下がった後も長期(3~4週間)にわたって続く

登園・登校の目安

発熱や激しい咳が治まっている段階

治療方法

一般的には抗菌薬(マクロライド系などの抗生物質)によって治療しますが、抗菌薬の効かない「耐性菌」に感染した場合は他の抗菌薬で治療を行います。
軽症ですむ場合が多いですが、重症化した場合には入院等が必要になるケースもあるため、長引く咳などの症状があるときは、医療機関の受診をおすすめします。

予防方法

現状マイコプラズマ肺炎を予防するワクチンはないため、手洗い等の一般的な感染症対策を徹底しましょう。

参考:厚生労働省|マイコプラズマ肺炎に関するQ&A 平成23年12月作成、平成24年10月改訂

マイコプラズマ肺炎の詳細については以前の記事にもまとめています。

感染症にかからないためには?

本記事では子どもがかかることが多い代表的な感染症を紹介しましたが、いかがだったでしょうか?
意外にも薬や予防するためのワクチンは少ないですよね。
ではこれらの感染症にそもそもかからないようにするためにはどうしたら良いのでしょうか?
感染症はその多くが「飛沫感染(+エアロゾル感染)」と「接触感染」が主な感染経路となります。
したがって、まずはこれらの感染経路を遮断することが効果的な対策となるため、「①マスクの着用」「②こまめな手洗い・手指消毒」「③定期的な換気」といった基本的な感染症対策が有効です。

マスクの効果については
以前の記事に詳細をまとめています

また、ウイルスを防ぐだけではなく自身の「免疫力を低下させない」こともとても重要となります。
免疫力は、大人よりも子供の方が弱いとされているため、免疫力を低下させないよう日々の生活習慣に気を付けましょう!

有効な免疫対策

  • しっかりとした睡眠をとる
  • 適度な運動をする
  • バランスの良い食事をとる
  • サプリメントを摂取する

キリンでは、新型コロナウイルスだけでなくインフルエンザウイルスの感染抑制や風邪の罹患率の低下が報告されている「乳酸菌」の研究を約15年間に渡り行ってきました。詳細は下記のページにまとめていますのでぜひご覧ください!
科学の力であなたの生活のお役に立てたら嬉しいです!