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【話題】制御性T細胞とは?
ノーベル賞を受賞した理由をわかりやすく解説!
2025.12.09
ノーベル賞で話題沸騰中の「制御性T細胞(せいぎょせいティーさいぼう)」。
2025年10月6日に大阪大学・特任教授の坂口志文先生がノーベル賞を受賞しました。
日本人のノーベル賞受賞者としては29人目となり、生理学・医学賞では6人目の快挙となります。
2018年には、京都大学・特別教授の本庶佑先生が免疫学の領域で受賞したのも記憶に新しいですよね。
最近とてもアツい分野になっている免疫学ですが、今回の記事ではこの「制御性T細胞」についてわかりやすく解説していきます。
そもそも免疫ってなに?
制御性T細胞の解説をする前に“免疫”という仕組みについて解説していきます。
そもそも“免疫”というのは一体何者なのでしょうか?
“免疫”とは本来わたしたちのからだに備わっている防御システムのことで、体内に侵入してくる「ウイルス」や「細菌」からからだを守ってくれているものです。
そのため、免疫力がしっかり維持されていると風邪やインフルエンザ、新型コロナウイルスといった感染症にかかりにくくなります。
またガン細胞は健康なからだであっても1日に5,000個程度発生しているといわれているのですが、免疫のはたらきによってこのガン細胞についても排除することができています。
すなわち免疫力が低下してしまうと、外部からの異物や内部で発生する異物にからだが負けてしまい、感染症やガンの疾病リスクが高くなってしまう可能性があります。
そんな大切な免疫力ですが、食事の栄養バランスが崩れたり、十分な睡眠時間が確保できなかったり、運動不足になったりすると低下してしまいます。
免疫力が低下しないように食事、睡眠、運動をしっかりと意識した生活を心がけたいですよね。
※それぞれの詳しい内容については過去の記事にまとめています。
冬も近づいてきてだんだんと寒くなってきましたが、この寒さによっても免疫力が低下するといわれています。
冬に向けてしっかりと寒さ対策も行っていきましょう!
制御性T細胞とは?
さてここまで免疫について解説してきましたが、では一体制御性T細胞とは何者なのでしょうか?
私たちのからだを守ってくれている免疫というシステムには、実は一つだけ大きな問題が存在しています。
それは免疫が過剰にはたらき過ぎると自分の健康なからだまで攻撃するようになってしまうということです。
これがいわゆる「自己免疫疾患」とよばれる病気(例:関節リウマチや1型糖尿病など)の原因です。
しかし私たちのからだはうまくできていて、免疫が過剰にはたらかないようにこの免疫の暴走を抑えるしくみが備わっています。
その暴走状態を防ぐしくみというのが、今回ノーベル賞を受賞することになった制御性T細胞なんです。
ちなみにこの制御性T細胞は、英語ではRegulatoryTcell(レギュラトリー・ティー・セル)略して「Treg(ティーレグ)」と呼ばれています。
つまりTregは免疫のブレーキ役。
他の免疫細胞たちが「敵を攻撃しろー!」と盛り上がりすぎたときに「ちょっと待って!落ち着いて!」とブレーキをかけてくれる細胞なんです。
Tregがいることによって免疫をちょうどいいバランスで保ってくれているんですね。
なぜノーベル賞に選ばれたのか?
それではなぜこのTregの発見が、今回ノーベル賞に選ばれたのでしょうか?
簡単にまとめると免疫に“アクセルとブレーキ”があることを発見し、病気の治療にもつながる道を開いたからです。
それまでは、免疫がどのようにして自己を攻撃しないように制御できているのかはわかりませんでした。
しかし、坂口先生が暴走を止める“特別なT細胞”がいることを世界で初めて見つけたことによってこの現象が解き明かされることになります。
そしてこの発見を機に、世界中で「Tregを使った治療」の研究がどんどん進んでいきました。
たとえば自己免疫疾患(1型糖尿病、関節リウマチなど)やアレルギー、アトピー性皮膚炎の治療、臓器移植をする際の拒絶反応(他人の臓器を移植されたときに攻撃してしまう反応)の緩和といったものです。
治療法も色々なものが研究されていますが、自分の血液からTregを取り出した後に研究室で増やしてからだに戻す方法だったり、からだの中でTregを増やす薬を使う方法だったりなど様々なアプローチが世界中で研究されています。
こういった治療法の基礎となる細胞を発見したという大きな功績が讃えられ、今回ノーベル賞を受賞するにいたりました。
制御性T細胞の
はたらきとメカニズム
ここからは少し専門的な内容になりますが、ではTregがどのようなメカニズムで免疫反応を制御しているのかを解説していきます。
まずざっくりと説明するとTregは3つのはたらきを持っているといわれています。
- ① 攻撃をやめるよう信号を出す
- ② 攻撃的な免疫細胞に直接
はたらきかけて落ち着かせる - ③ 必要がなくなった免疫反応に片づくよう促す
ではそれぞれどのようなメカニズムで制御しているのでしょうか?
❶攻撃をやめるよう信号を出す
Tregは活性化した周囲の免疫細胞を落ち着かせる信号を出すことで免疫反応を抑制します。
この信号のことを専門的には「サイトカイン」と呼びます。
活性化しすぎた免疫反応を検知するとTregはサイトカインである「IL-10」や「TGF-β」という信号を分泌します。
この信号によって敵を攻撃する「エフェクターT細胞」が活性化しないようにしたり、増殖が抑えられ、免疫反応にブレーキがかかります。
❷攻撃的な免疫細胞に直接はたらきかけて落ち着かせる
信号を出す以外にもTregは攻撃的な免疫細胞に対し、直接話しかけるようにしてそのはたらきを抑える能力をもっています。
専門的に言うと「細胞間接触」と呼ばれるしくみで、Tregの細胞表面にある「CTLA-4」と呼ばれる分子がエフェクターT細胞などの細胞にくっつき、もう戦わなくていいよ!というスイッチを押すことで免疫反応にブレーキをかけることがわかっています。
❸必要がなくなった免疫反応に片づくよう促す
他にもTregは、役目を終えた免疫細胞に対してアポトーシスといわれる細胞死を誘導させることで細胞を減らし、免疫反応を収束させる能力を持っています。
以上これらの3つのはたらきによって、からだが過剰な免疫状態になることを防いでいます。
免疫力は高めておくのがいい
ここまで、免疫を抑えるはたらきを持つTregについて解説してきました。
しかし誤解していただきたくないのは、あくまでTregというのは過剰な免疫状態を抑える細胞であり、免疫力が低下してしまうことはからだにとって良いことではありません。
そもそも免疫力が低下すると感染症等にかかりやすくなってしまうため、免疫力は基本的に高めておくというのが大切です。
食事、睡眠、運動をしっかりと心がける以外に、免疫を活性化する食品を摂取するという方法でも効率的に免疫力を高めることができます。
最後に私たちキリンが約15年にわたる研究の末、開発に成功したプラズマ乳酸菌についてご紹介します。
プラズマ乳酸菌の研究成果
プラズマ乳酸菌は、免疫の司令塔の細胞であるpDC(プラズマサイトイド樹状細胞)を活性化できるレアな乳酸菌です。
そのレアな能力によって、食品の素材としては異例の多さである34報もの研究論文が発表されており、様々な感染症に効果があることが研究からわかっています。
その中でも代表的なものをピックアップしてご紹介します。
風邪・インフルエンザ様症状に対する研究成果
健康な男女213名をプラズマ乳酸菌を飲んだグループと飲まなかったグループに分け、冬季70日間の症状を調べました。
その結果、「咳」や「熱っぽさ」など、風邪・インフルエンザ様症状の自覚症状が軽減したことが報告されました。
また、岩手県雫石町の全小中学校生を対象に行ったヒト試験(観察研究)では、プラズマ乳酸菌を給食で3ヶ月間(週3回)配布したところ、隣接するA町と比較してインフルエンザの累積罹患率が減少したことが報告されました。
小中学生の町別
インフルエンザ罹患率の比率
**は有意水準0.01で、統計学的に有意差あり
出典:Health, 9: 756-862, 2017.
このように、プラズマ乳酸菌による風邪やインフルエンザに対する数多くのエビデンスが報告されています。
これらのデータは、プラズマ乳酸菌が風邪やインフルエンザに対しても機能することを示唆しています。
詳しくはこちら他にもプラズマ乳酸菌には新型コロナウイルスをはじめ、様々なウイルスや細菌に対しての研究結果があります。
興味のある方は、ぜひ下記のページを覗いてみてください!
なお、プラズマ乳酸菌はこのように免疫を高く維持してくれるはたらきがありますが、健常な成人に対して過剰にはたらいたり免疫が暴走したりといった、有害な事象は生じないことが確認されています。
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関連ページ
プラズマ乳酸菌の安全性
以上、今回は話題の制御性T細胞について解説しました。
私たちのからだに備わっている免疫のしくみについて、理解していただけましたでしょうか?
これからの季節、体調を崩さないよう免疫力をしっかりと高めて過ごしていきましょう!